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マンションの高木剪定は、なぜ見積もりが膨らむのか|八千代市の管理組合が決議の前に確かめる費用と許可

理事会に上がってきた見積書に、見慣れない項目が並んでいたのではないでしょうか。

「高所作業車回送費」「交通誘導警備員 2名」「道路使用許可申請」。木を切るだけの工事なのに、木そのものの作業代よりも、その周りの費用のほうが大きく見える。ある高さを超えた樹木の工事では、これが普通の形です。

竣工のときに植えられた木は、築十数年から数十年を経て、脚立で手が届く範囲をはるかに超えています。この記事では、脚立では届かず高所作業車が要る木を高木と呼びます。実務上はおおむね7メートルを超えたあたりから、戸建ての庭木の延長では扱えなくなります。法令上の境目は後で書くとおり2メートルと10メートルですが、現場で車を呼ぶかどうかの分かれ目はこのあたりです。作業の方法が変わり、必要な資格が変わり、そして法律上の手続きが増えます。金額が跳ね上がるのには、そのぶんの理由があります。

私たちは、おうちの御用聞き 家工房 八千代緑が丘店です。地域密着の事業として活動を続け、地元の沢山のお客様に支持されています。住まいまわりのお困りごとをお引き受けしており、小さなことから大きなことまでお気軽にご相談ください。代表の平須賀は複数年にわたりマンション管理組合の理事長を経験しており、この見積書を前に理事会で説明する側の苦労を知っています。

この記事は、八千代市内のマンションで敷地内の高木の扱いを決めようとしている理事・理事長に向けて書いています。見積もりの内訳がなぜその形になるのか、誰の決議が必要なのか、市に何を届け出るのかを、法令と八千代市の一次情報から順に整理します。業者選びの比較表の代わりに、判断の材料そのものを置いています。発注する側が自分で決められるようにするための記事です。

見積もりが膨らむ理由は、木の外側にあります

高木1本の工事費は、いくつもの層が積み重なって決まります。木そのものを切る手間が占めるのは、そのうちの一部です。

費用の層何に対する費用か高木で膨らむ理由
作業代職人の人件費樹上での作業になり、1本あたりの時間が伸びる
機械の費用高所作業車のリース代高さに応じて車種が上がり、日額が上がる
回送費現場までの往復の搬送リース代とは別に立つ。現場が1日で終わっても往復は発生する
手続きの費用道路使用許可の申請と図面作成公道を使う場合にだけ発生する
交通誘導の費用警備員の日額許可の条件として求められると、人数分そのまま乗る
養生・保護の費用敷鉄板、植え込みの保護車両の重さを受けられない地面だと追加になる
処分費切った枝葉の運搬と処理事業系の料金が適用される

この表のうち、木を切る技術に対する費用は最初の1行だけです。残りは「脚立では届かない木を安全に切るために必要な段取り」に対する費用です。だから見積もりを見て「木を切るだけなのに」と感じるのは自然な反応であり、同時に、その感覚のままでは判断できないということでもあります。

最初の1行の作業代が膨らむのは、地上の植木と違って1本に張り付く時間が長くなるためです。幹に登るか作業床に乗るかの違いで、同じ1本でも半日と1日が入れ替わります。以下では、残りの層を順に開いていきます。

高さ2メートルで義務が変わり、10メートルで資格が変わります

なぜ脚立ではいけないのか。ここが出発点になります。

高さ2メートル以上の作業には、作業床が必要です

労働安全衛生規則第518条第1項は、事業者に対してこう定めています。高さが2メートル以上の箇所で作業を行う場合において、墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない、と。

脚立の天板は、ここでいう作業床とは別のものです。同規則第519条は、高さ2メートル以上の作業床の端や開口部には、囲いや手すりを設けることも求めています。脚立にあるのは、踏板と天板だけです。

作業床を設けることが困難なときの扱いも、同規則第518条第2項に書かれています。防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等の措置を講じなければならない、とされています。つまり「作業床が無理なら、落ちても止まる仕組みを用意する」という筋です。条文は、代わりの措置を求めています。

さらに同規則第521条は、その器具を使わせるときには安全に取り付けるための設備等を設けなければならないと定め、取り付け設備の異常の有無を随時点検することも求めています。

高木の樹上作業では、木そのものに器具を取り付けます。だから樹木の強度が作業の安全に直結し、腐朽が進んだ木では樹上作業そのものが選べなくなります。高所作業車を持ち込む判断は、ここから出てきます。

作業床の高さ10メートルが、資格の境目です

高所作業車を動かす人に必要な資格は、高さで2つに分かれます。

作業床の高さ必要なもの根拠
10メートル以上高所作業車運転技能講習の修了(就業制限業務)労働安全衛生法施行令第20条第15号
10メートル未満特別教育労働安全衛生規則第36条第10号の5

いずれも、道路上を走行させる運転は除かれています。走行は自動車の免許の話で、ここでいう運転は作業装置を操作することを指します。

この区分は、見積もりを読むときに使えます。作業床の高さ10メートル以上の車を使う工程が入っているなら、操作する人は技能講習の修了者でなければなりません。人を確保できるかどうかが工程を左右しますから、日程の融通が利きにくい理由にもなります。

7メートルほどの木を切るのに作業床10メートルの車が必要か、という判断は現場ごとに変わります。枝の先端まで手を伸ばすには、幹の高さより上に作業床を置く必要があるためです。ここは業者に「作業床何メートルの車を予定しているか」を確かめてください。その答えで、資格の区分も日額の区分も決まります。

高所作業車の費用は、借りる値段だけでは終わりません

車両にかかる費用は、リース代と回送費が別に立つのが一般的です。

回送費は、現場に車両を運び、帰すための費用です。作業が1日で終わっても、往復は1回ずつ発生します。ここを見落とすと、「作業は半日なのに車両費が丸1日分」という見積もりを不当に感じてしまいます。

車種は、作業床の高さと、現場までの進入経路で決まります。前面道路が狭い、電線が低い、門扉の幅が足りないといった条件があると、より小型の車両を選ぶことになり、その分だけ届く高さが下がります。届かない部分は樹上作業に切り替えるか、複数日に分けるかになり、どちらも費用が増えます。

地面が車両の重さを受けられないことがあります

マンションの敷地でとくに問題になるのが、車両を置く場所の耐荷重です。

高所作業車はアームを伸ばすとき、車体を支えるための脚を張り出します。この脚は、車両の重さを数か所の接地点だけで受けます。1本の脚にかかる力は、タイヤで支えているときより大きくなります。その真下が地下の駐車場や地下ピット、あるいは機械式駐車場の上だと、そのままでは載せられません。

対策として、荷重を広く分散させる敷鉄板を敷きます。敷鉄板は運搬にも設置にも重機が要りますから、これ自体が費用の項目になります。

管理組合として先に確かめておくべきことは、竣工図で車両を置く予定の場所の下に何があるかです。図面がすぐに出てこない場合は、その調査から始まります。見積もり依頼の段階で竣工図の所在を確認しておくと、後から「載せられないことが分かった」という手戻りを防げます。

公道に停めるなら、警察署長の許可が必要です

敷地内にアームを伸ばすスペースがなく、車両を前面の公道に停める。マンションではよくある形です。ここから手続きの話になります。

根拠は道路交通法第77条第1項第1号です

道路交通法第77条第1項は、同項各号に該当する者は、その行為に係る場所を管轄する警察署長の許可を受けなければならないと定めています。第1号に挙げられているのは、道路において工事若しくは作業をしようとする者又は当該工事若しくは作業の請負人です。

条文が「請負人」を含めている点が、管理組合にとって大事なところです。実務上は施工業者が申請者になるため、発注者である管理組合が警察署の窓口に出向くわけではありません。ただし、その手間は見積もりの中に「申請代行」「諸手続費」といった名前で入るか、作業代に溶け込んでいます。管理組合はその費用を負担しており、窓口へ行く役だけを業者が担っている形です。

千葉県警察の標準処理期間は7日です

八千代市内であれば、管轄は千葉県警察の八千代警察署になります。千葉県警察は、道路使用許可の標準処理期間を7日として公表しています。申請日を含み、行政庁の閉庁日を除いて数えます。

手数料は、千葉県の条例の定めにより、申請の際に千葉県の証紙で納付する形になります。その金額は千葉県警察の公表ページからは確認できませんでしたので、この記事では額を書きません。所轄の八千代警察署交通課で確かめられます。

いずれにしても、見積書に載る申請関係の費用で主たる部分を占めるのは手数料ではありません。その大半は、申請書に添える見取図や保安設備配置図をつくる手間と、窓口へ出向く人件費です。ここを理解しておくと、その項目を値切る交渉がどこに効いてどこに効かないかが見えてきます。

工程の面では、標準処理期間が7日であることを前提に、作業日の2週間前には申請を提出し終えている状態を目指してください(許可が下りるのは、そこから7日前後の見込みです)。書類の不備や、現場周辺で別の工事が重なっている場合は、さらに日数がかかります。総会や理事会の日程から逆算するときは、この7日を工事の手前に置いて考えます。

「敷地内だから許可は不要」とは言い切れません

警備費用と申請の手間(金額は後で書きます)は、できれば避けたい。それで「うちは敷地内に停めるから許可は要らない」と考えたくなります。ここに落とし穴があります。

道路交通法第2条第1項第1号は、この法律でいう「道路」を、道路法の道路、道路運送法の自動車道、そして一般交通の用に供するその他の場所と定義しています。

後半が効きます。土地の所有権が誰にあるかは、この定義に出てきません。不特定多数の人や車が自由に通行できる実態があれば、登記の上では私道であっても、マンションの敷地内通路であっても、道路交通法上の道路と判断される余地があります。

判断の分かれ目になるのは、物理的に区切られているかどうかです。

現場の状況判断の傾向
門扉や車止めがなく、通り抜けに使われている敷地内通路一般交通の用に供する場所と判断される余地がある
フェンスで囲まれ、車では入れない中庭道路に当たらない可能性が高いが、協議はしておく
ゲートはあるが、来客や配達の車が自由に出入りする車路通行の実態を見て判断される

最終的な判断は所轄警察署の裁量に属します。ですから、自己判断で進めないでください。施工業者に事前協議をしてもらい、その結果を書面か議事録に残すのが実務上の要点です。

これは管理組合の防衛にもなります。後から「許可が必要だった」と指摘された場合、協議の記録があるかどうかで立場が変わります。理事会としては、見積もりを取る段階で「警察署と事前に協議していただけますか」と一言頼んでおけば足ります。

交通誘導警備員の費用は、国の単価表の額では済みません

警備費用が理解されにくいのは、単価表の数字と請求額が一致しないからです。この差には、国が明記している理由があります。

交通誘導警備員のAとBは、資格で分かれています

国土交通省と農林水産省が毎年公表する公共工事設計労務単価では、交通誘導警備員がAとBに分かれています。定義はこうなっています。

  • 交通誘導警備員A:警備業者の警備員で、交通誘導警備業務に従事する一級検定合格警備員又は二級検定合格警備員
  • 交通誘導警備員B:警備業者の警備員で、交通誘導警備員A以外の交通の誘導に従事するもの

つまりAとBの違いは、国家検定に合格しているかどうかです。手の空いた作業員が誘導灯を振る形では、この要件を満たせない扱いです。公安委員会が指定する路線での作業では、配置する警備員のうちに検定合格者を含めることが求められます。前面道路が主要な県道や国道にあたるマンションでは、単価の高いAを避けられない場合があります。

千葉県の日額単価は3年でこう動きました

公表されている千葉県の単価を並べます。千葉県の値です(全国平均とは別の数字です)。

適用年度交通誘導警備員A(検定合格者)交通誘導警備員B
令和6年3月から適用18,300円16,000円
令和7年3月から適用19,300円16,900円
令和8年3月から適用19,700円18,100円

2年でAは1,400円、Bは2,100円上がりました。AとBの差は、令和6年が2,300円、令和7年が2,400円、令和8年が1,600円です。令和7年から令和8年にかけてBが大きく上がり、AとBの差が縮みました。

参考までに、令和8年3月から適用する単価の全国平均は、Aが18,911円で前年度比プラス5.8パーセント、Bが16,749円で同プラス6.7パーセントと公表されています。千葉県の値はいずれも全国平均より高い水準にあります。

単価表の額に、諸経費は含まれていません

ここが最も誤解される点です。国土交通省は、この単価について次のように明記しています。

本単価は労働者に支払われる賃金に係わるものであり、現場管理費(法定福利費の事業主負担分、研修訓練等に要する費用等)及び一般管理費等の諸経費は含まれていない。例えば普通作業員や交通誘導警備員A・Bの単価については、建設会社や警備会社に必要な諸経費は含まれていない。

つまり表の19,700円は、警備員本人に渡る賃金の基準額です。管理組合が支払う額には、この上に警備会社の社会保険料の事業主負担分、交通費、装備品代、現場管理費、一般管理費が乗ります。

単価表を持ち出して「表では19,700円なのに、なぜ請求はこれより高いのか」と交渉するのは、この構造を取り違えた交渉になります。国の資料そのものが「諸経費は入っていない」と書いているためです。

管理組合として確かめるべきは、金額の絶対値よりも、次の3点です。

  1. 警備員は何名で、何日分か。その人数が許可の条件として求められた人数と一致しているか
  2. AとBのどちらか。検定合格者が必要な路線なのか、業者の判断で上位を当てているのか
  3. 作業日数が延びたときの扱い。日額のまま追加になるのか、上限があるのか

警備費用は、おおむね人数×日数で動きます。作業日数を1日縮めれば、その1日分の人数分が落ちます。複数本の高木をまとめて1回の工事にするのが費用面で有利になるのは、車両の回送費と警備費用が日数に連動するからです。1本ずつ年度をまたいで発注すると、この2つを毎回払うことになります。

剪定と伐採で、必要な決議の重さが変わります

ここから、誰が決めるのかという話に移ります。建物の区分所有等に関する法律の条文で整理します。

行為の性質で、必要な決議が変わります

行為法律上の位置づけ必要な決議
枝を払う、透かす、樹形を整える共用部分の管理に関する事項(第18条第1項本文)集会の決議(第39条第1項)
枯れ枝の除去など現状を保つ作業保存行為(第18条第1項ただし書)各共有者がすることができる
高木を全て伐採して別の用途にする共用部分の変更(第17条第1項)出席者の各4分の3以上

第18条第1項は、共用部分の管理に関する事項は、第17条の場合を除いて集会の決議で決すると定め、ただし保存行為は各共有者がすることができるとしています。

その集会の決議の要件は第39条第1項にあります。集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、出席した区分所有者及びその議決権の各過半数で決する、と。条文には出席者の数についての定めが置かれていません。定足数は規約で定めるのが通例ですから、まず自分のマンションの規約を確かめてください。

いっぽう第17条第1項の要件は重くなります。共用部分の変更(形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、集会において、区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各4分の3以上の多数による決議で決すると定められています。条文の側に出席要件が書かれている点が、第39条第1項との違いです。

芯止めはどちらに入るのか

樹高を下げる「芯止め」は、判断が分かれやすい作業です。

枝を払うだけなら管理の範囲に収まります。しかし幹の上部を落として樹高そのものを下げると、その木は元の姿には戻りません。景観上の位置づけが大きい木であれば、形状の著しい変更にあたると見る余地があります。

実務上は、規約と、その木が竣工時の植栽計画でどう位置づけられていたかを見ることになります。エントランスのシンボルツリーとして図面に名前が入っている木と、外周に並んだ列植の1本では、扱いが変わって当然です。迷う場合は総会にかけておくほうが、後の紛争を避けられます。

危険な高木なら、決議のハードルが3分の2に下がります

この条文は、管理組合にとって最も使える規定です。

建物の区分所有等に関する法律第17条第5項は、同条第1項の決議要件の適用について、「4分の3」とあるのは「3分の2」とすると読み替える場合を定めています。読み替えが働く場面のひとつが、次の内容です。

共用部分の設置若しくは保存に瑕疵があることによって他人の権利若しくは法律上保護される利益が侵害され、若しくは侵害されるおそれがある場合における、その瑕疵の除去に関して必要となる共用部分の変更。

条文が「侵害されるおそれ」を含めている点が重要です。実際に被害が出る前の段階でも、この読み替えが働きます。

腐朽が進み、倒れれば隣地や通行人に危害が及ぶ状態の高木。これを取り除くための伐採は、この規定に当たる余地があります。そうであれば、必要な賛成は出席者の4分の3ではなく3分の2で足ります。100戸のマンションで60戸が出席した総会なら、45戸ではなく40戸で可決できることになります。

ただし、使うには準備が要ります。「瑕疵がある」「侵害されるおそれがある」という前提を、理事会の心証を超えて書面で示せる状態にしておく必要があります。

  • 樹木医などによる診断の記録。腐朽の位置と程度、倒伏の危険性についての所見
  • 幹や根元の状態を写した写真。撮影日を残す
  • 過去の落枝や傾きの記録。管理員の日誌や住民からの申し出

この読み替えを使うつもりなら、議案書にどの条文で何を求めるのかを明記してください。単に「3分の2で可決した」とだけ残すと、後から決議の有効性を問われたときに根拠を示せません。

なお、これは決議のハードルの話です。枝が越境している、落ち葉が詰まるといった不便の解消は、この規定の対象ではありません。読み替えが働くのは、権利や法律上保護される利益の侵害、またはそのおそれがある場合に限られます。

特定の住戸に影響するなら、決議だけでは足りません

決議が通っても、それだけでは進められない場合があります。

第17条第2項は、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならないと定めています。

そして見落とされやすいのが第18条第3項です。この第17条第2項の規定を、第18条第1項本文の場合に準用すると書かれています。

つまり、管理の範囲にとどまる剪定であっても、特定の住戸の使用に特別の影響を及ぼすなら、その住戸の所有者の承諾が必要になります。

具体的には、次のような場面が考えられます。

  • 長年その木が日射を遮ってきた住戸で、強い剪定によって室内環境が大きく変わる
  • 木が目隠しになっていた住戸で、剪定により向かいの建物から室内が見えるようになる
  • 専用使用権のある庭に植わっている木を、管理組合の判断で切る

どこまでが「特別の影響」にあたるかは、その住戸が受ける不利益の程度と、工事の必要性を比べて判断されます。日当たりが少し変わる程度であれば、通常は受忍すべき範囲と扱われます。受忍の限度を超えるかどうかが分かれ目になります。

保存行為については、第18条第3項の準用が「第一項本文の場合」に限られているため、ただし書の保存行為には及びません。枯れ枝を落とす程度の作業で承諾を求める必要はない、という整理になります。

実務としては、剪定の範囲が大きくなる住戸には、工事の前に個別に説明しておくのが確実です。承諾が法律上必要かどうかを工事の後に争うより、先に話しておくほうが安く済みます。理事会の議事録に「該当住戸へ事前説明済み」と残しておいてください。

切った枝の処分費は、家庭ごみの料金では計算できません

ここは八千代市固有のルールで、金額が具体的に変わる部分です。

市は管理組合を事業者と明記しています

八千代市は「事業系ごみの出し方」のページで、事業系ごみをこう説明しています。飲食店や各種事務所、マンション等の管理組合、ホテル、学校、官公庁等の事業活動に伴って発生した廃棄物のこと、と。

管理組合が名指しで事業者として挙げられています。したがって、剪定した枝葉に適用されるのは事業系一般廃棄物の料率です。

家庭系(粗大ごみ)事業系一般廃棄物
手数料10キロにつき150円10キロにつき270円(税込)
端数の扱い10キロ未満も150円10キロに満たないときも270円
支払い現金計量後に現金

単価が1.8倍になります。高木1本から出る枝葉は、軽く見ても数百キロの単位になります。ここを家庭系の料率で見積もっていると、処分費の想定が大きくずれます。

市の集積場所には出せません

市は明記しています。事業系ごみを家庭ごみの集積場所へ出すことはできません。

管理員が少しずつ市の集積所へ出していく、という節約の方法は使えません。市が示す処理の方法は2つだけです。

  1. 自ら八千代市清掃センターへ搬入する
  2. 八千代市一般廃棄物処理業許可業者に委託する

2番目については、市が廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)第6条の2第6項を挙げて説明しています。市の許可を受けた業者へ委託しなければなりません。造園業者がそのまま持ち帰って処分できるかどうかは、その業者が市の許可を持っているかで決まります。見積もりに処分費が含まれている場合は、許可業者への委託になっているかを確かめてください。

自己搬入を選ぶ場合の条件も決まっています。

項目内容
受入日月曜から金曜(祝日・年末年始を除く)
受入時間午前8時30分から11時40分/午後1時から4時
袋透明または半透明で70リットル以下
使えないものダンボール、紙袋
事前確認著しく大きいもの、大量に出る場合は清掃センターへ

高木の枝を70リットル以下の袋に収めていく作業を、管理組合の手で行うのは現実的ではありません。自己搬入は少量のとき、許可業者への委託は工事を伴うときという使い分けになります。

切る前に確かめる、八千代市の3つの決まり

処分のほかに、八千代市内のマンションで関わってくる決まりがあります。

植えてはいけない木を定めた条例があります

八千代市なし赤星病防止条例(昭和57年八千代市条例第18号)が、市内の広い範囲でびゃくしん類の植栽を規制しています。

規制区域に、緑が丘(2丁目および3丁目を除く全域)、緑が丘西(1丁目19番から21番までを除く全域)、ゆりのき台、萱田が含まれます。

規制される樹種は10種です(市の表記は、スカイロケットを除いてひらがなです)。かいづかいぶき、びゃくしん(いぶき)、たまいぶき、くろいぶき、たちびゃくしん、みやまびゃくしん(しんぱく)、はいびゃくしん(そなれ)、スカイロケット(えんぴつびゃくしん)、ねず(ねずみさし)、はいねず(おおしまはいねず、みやまねず)。

高木の伐採後に補植を計画するときは、ここに当たります。かいづかいぶきとスカイロケットは洋風の外構によく使われる樹種で、市外の業者が条例を知らずに提案してくることがあります。見積もりの段階で樹種名を確認してください。

既存の木が規制樹種だった場合の手続きも、施行規則に定められています。除去命令は「八千代市びゃくしん類除去命令書」により行われ、履行期限は、所有者が命令書を受領した日から90日です。既存樹の除去は、市長がその樹木の評価額を決定し、所有者から除去承諾書の提出を受けた後に行われます。市が買い取る場合は、市から所有者へ評価額相当額が支払われます。代替樹を希望する所有者には、市が造園業者をあっせんします。

指定された木は、届出をしないと切れません

八千代市ふるさとの緑を守る条例に基づく指定が2つあります。

制度規模手続き
保存樹木令和4年4月26日現在で70本を指定環境保全林等伐採等届出書
環境保全林令和4年4月1日現在で7か所18,453平方メートル環境保全林等伐採等届出書

環境保全林は、市街化区域内に残る500平方メートル以上の森林を指定する制度です。敷地内の木でも、指定されていれば管理組合の判断だけでは切れません。総会で決議が通っていても、届出が済んでいなければ工事に入れません。

自分の敷地内の木が指定を受けているかどうかは、市の環境政策課で確かめられます。竣工時から残っている大径木がある場合は、決議の前に照会しておいてください。

緑化協定が結ばれている可能性があります

八千代市ふるさとの緑を守る条例に基づき、市は敷地面積500平方メートル以上の土地で開発行為や建築行為を行う者と協定を締結しています。住宅の場合の区分は次のとおりです。

敷地面積協定の区分
500平方メートル以上3,000平方メートル未満緑化協定
3,000平方メートル以上100,000平方メートル未満緑地協定または緑化協定
100,000平方メートル以上三者協定(市・開発者・土地所有者の三者で結ぶもの)

マンションの敷地は多くがこの区分に入ります。協定が結ばれていれば、緑地の量について約束がある可能性があります。高木を複数本まとめて伐採する計画のときは、協定の有無と内容を先に確かめてください。緑化の基準は八千代市緑化推進指導要綱によるもので、令和5年4月1日から基準が変わっています。

高木の剪定・伐採に使える市の補助金は見当たりません

高木の剪定や伐採の費用を補助する八千代市の制度は、2026年10月1日時点で見当たりません。

なお、公益財団法人八千代市地域振興財団が生垣を新しくつくるときの助成を行っていますが(上限200,000円)、これは「新たに生垣をつくる」制度です。すでにある木を切る費用には使えません。対象は市内に居住されている方とされており、管理組合が申請できるかはページに明記がありません。

切り方と切った後で、あとの年数に響くこと

技術の話に移ります。金額よりも、こちらのほうが後の年数に響きます。

枝の途中で切ると、木が弱ります

枝を、枝分かれしていない途中で切り落とすことを「ぶつ切り」と呼びます。作業は速く、費用も抑えられます。それでも勧められないのには理由があります。

木は、枝の分かれ目にある組織を使って切り口を塞いでいきます。途中で切ると、その組織を欠いた状態になります。切り口が塞がらないまま、そこから腐朽菌が入ります。

さらに、切られた枝の下から細い枝が束になって伸びてきます。これらは幹との付き方が浅いため、成長しても強度は出ないままです。数年後、その枝が風で折れます。費用を抑えたはずの剪定が、数年後に落枝の危険をつくることになります。

芯止めも同じ構造を持っています。樹高を下げる目的そのものは正当ですが、切る位置を誤ると、幹の上部から腐朽が入り、そこから下へ進みます。マンションの高木で樹高を下げる必要があるなら、どの位置で切るのかを業者に説明させてください。「上から2メートル切ります」で終わらせず、「どの枝の分かれ目で落とすか」まで聞く形になります。

癒合剤は、太い切り口に使います

切り口に塗る薬剤を癒合剤と呼びます。塞がるまでの間、腐朽菌の侵入と乾燥を防ぐためのものです。

細い枝の切り口は、木が自分で塞ぎます。塗る意味があるのは、塞ぐまでに時間がかかる太い切り口です。高木の剪定では直径が数センチを超える切り口が出ますから、ここが対象になります。

見積もりに癒合剤の項目がない場合、太い切り口を出す作業が含まれているかを確かめてください。含まれているのに塗らない計画であれば、その理由を聞きます。

1本切ると、隣の木が傷むことがあります

群れで植わっている高木を1本だけ切ると、残った木の環境が変わります。

それまで隣の木に遮られていた日射と風が、直接当たるようになります。樹皮が薄い樹種では、急に強い日射を受けた幹が傷むことがあります。風については、支え合っていた形が崩れることで、残った木の受ける力が増えます。

「危ない1本だけ切る」という判断が、翌年に別の1本を危なくすることがあります。複数本が並んでいる場合は、1本ずつの可否を積み上げる前に、列全体をどうするかを1回で考えてください。年度をまたいで1本ずつ切ると、費用の面でも不利になります(回送費と警備費用の項で書いたとおりです)。

根を抜く作業は、切るより重い作業です

伐採の後に切り株を残すか、根まで抜くかという判断があります。

根を抜く作業は、地上部を切る作業とは別の重さを持ちます。樹齢の高い木の根は深く広く張っており、周囲の舗装や配管に絡んでいることもあります。掘る範囲が広がり、重機が入り、復旧の費用も出ます。見積もりを見て「そんなにかかるのか」と驚かれることが多いのはこの部分です。

切り株を残したまま地際で切り、必要に応じて薬剤で処置するという選択もあります。どちらを選ぶかは、その場所を後で何に使うかで決まります。駐車場や通路にするなら抜く必要があり、植え込みのままにするなら残せます。決議の議案をつくる段階で、切った後の使い方まで決めておいてください。

放置して倒れたとき、責任は管理組合に向きます

最後に、切らなかった場合の話をします。

民法第717条第1項は、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者が損害を賠償する責任を負うと定めています。占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が賠償することになります。共用部分の樹木であれば、その所有者は区分所有者全員です。管理組合が免責されても、負担は組合員の側に戻ります。

そして同条第2項が、この規定を竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用するとしています。木は工作物ではありませんが、責任の枠組みは同じです。

マンションの共用部分に植わっている木について、占有者にあたるのは管理組合です。日常的に管理し、業者を発注し、状態を把握できる立場にあるためです。つまり倒木が通行人や隣地に損害を与えた場合、賠償を求められるのは管理組合になります。

第1項のただし書は、必要な注意をしていれば占有者の責任が外れることを示しています。ここで意味を持つのが記録です。

  • 定期的に点検していた記録。点検日と点検者
  • 樹木の状態についての所見。腐朽や傾きの有無
  • 危険が指摘された木について、理事会で検討した議事録
  • 業者に見積もりを取った記録。取ったうえで予算の都合で見送ったなら、その判断の経緯

「予算がなかったので切らなかった」ことそのものが責任を生むわけではありません。必要な注意を払っていたかどうかが問われます。住民から「あの木が傾いている」と申し出があったのに、議事録に残さず何もしなかった。この形が最も弱くなります。

同条第3項は、損害の原因について他に責任を負う者があるときは、占有者又は所有者がその者に対して求償権を行使できると定めています。直前に不適切な剪定をした業者があれば、そこへ求償する余地はあります。それでも、まず請求を受ける立場が管理組合であることは変わりません。

まとめ:決議の前に確かめる8つのこと

  1. 作業床の高さ何メートルの車を予定しているか。10メートルが資格の境目です(労働安全衛生法施行令第20条第15号)
  2. 車両を置く場所の下に何があるか。地下駐車場やピットの上なら敷鉄板の費用が出ます。竣工図の所在を先に確かめます
  3. 公道を使うのか、敷地内で完結するのか。門扉や車止めがない通り抜け可能な敷地内通路は、道路交通法上の道路と判断される余地があります
  4. 警察署との事前協議を業者にしてもらい、結果を書面で残す。千葉県警察の標準処理期間は7日です
  5. 警備員の人数と日数、AとBのどちら。単価表の額に諸経費が乗る構造なので、額の絶対値よりも人数と日数で見ます
  6. その作業は管理か、変更か。剪定は第39条第1項、著しい変更は第17条第1項で4分の3。危険の除去なら第17条第5項で3分の2に下がります
  7. 特定の住戸に特別の影響が及ばないか。剪定でも第18条第3項の準用で承諾が必要になることがあります
  8. 規制樹種・保存樹木・環境保全林・緑化協定に当たらないか。赤星病条例の規制区域には、緑が丘・緑が丘西(いずれも一部の丁目・番を除く)、ゆりのき台、萱田が含まれます。丁目単位の除外があるので、本文で確かめてください

費用を下げる余地が最も大きいのは、複数本をまとめて1回の工事にすることです。車両の回送費と交通誘導警備員の費用は、どちらも日数に連動します。1本ずつ年度をまたいで発注すると、この2つを毎回払うことになります。

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高所作業車を伴う規模の工事や、資格が必要な作業については、有資格の職人や専門業者が担当します。できることとできないことを、現地を拝見したうえで正直にお伝えします。

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